ホームスイートホーム

こういう葛藤を抱えてるひと、けっこういると思う。

 

「うちの母は男女同権を信じて男性に負けずバリバリ働いてました。毎晩遅くクタクタになって帰ってきてたけど、力を振り絞って家事も頑張ってた母を尊敬してます。そうやって稼いだお金でよい教育を受けさせてもらい、私は学歴とホワイトカラーの仕事を得ることができました。さぁ、これから一生懸命働こう。母のように。そう思いました。

 

でも、いざ社会に出てみたら意外とまだまだ労働環境て女性にとって厳しいんです。もう21世紀なのに…。独身の頃は残業が多くても気力でなんとかなったけど、結婚して家事も担うようになるとワークライフバランス消失。出産したら当然もっと大変なことに。仕事と家事でどんどん疲弊していって、なんのために生きているのかよく分からなくなってきました。

 

実は、母の手前ここまで抑圧してたけど、私家事がけっこう好きなんです。パンを焼いたり、編み物したり、ベーコンを自分で作ってみたり。このまま仕事と家庭の狭間で押しつぶされていくよりは、専業主婦になりたいと思います。それで、子どもを大切に育てて、環境にも優しい暮らしをする方が自分らしい生き方に思えます。ただ、博士号までとったことを考えると、『このまま家庭におさまってしまっていいのかなぁ』って罪悪感みたいなものを感じますね。やっぱり葛藤はあります」

 

前置きで900文字使いましたが、最近こんな本を読んでました。

 

HOMEWARD BOUND

 

どうやら最近アメリカ人女性の間で、家庭回帰の傾向が強まっているそうです。キャリアを求めてワークライフバランスを崩すよりは、主婦になって好きな家事やろうよ。て人が増えてるらしい。

 

この本、訳本も最近出たのですが原著の方を選びました。オリジナルの表紙の方が詩情があって好きです。

 

ハウスワイフ2.0


 

 

 

私が面白く感じたのは、アメリカ人主婦たちのこれまでの歩み(二次大戦前はこうで、50年代はこうだった、みたいな文化史)の記述。それとアメリカ人女性をとりまく労働環境の現状について書かれたとこです。後者は特に日本の働く女性も共感できて涙流しちゃうと思うな。冒頭の例のように、まだまだ女性が働きづらいとこは一緒なのね。思わず「スウェーデンはいいよな…」て比較しちゃうとこも。(ちなみに日本と違ってアメリカは産休制度がないそうです。もうちょっと先進的かなと想像してたんですが。でも保険制度だってしっかりしてない国だしな…)

 

まーでも読了して思ったね。この本で扱われてる女性たちは運がいいな、て。専業主婦になれるだけの世帯所得がある。なおかつ学歴もある(しかも高学歴の女性の例が多かった。学歴があれば、万が一離婚してもなんとか食べていけるかも知れない)。「家事」ていう自分の適性がちゃんと分かってるし、家事に邁進する環境も整ってる。あとは自分が専業主婦であることを受け入れ、(もしあれば)世間の批判をかわせるようになれば、すごく楽しい人生を送れるんじゃないかな。そういう意味ではこのタイプの人たちはあんまり心配してない。人生を楽しんでほしい。そして余ったエネルギーで社会貢献してくれたら最高だなと思う。

 

私が気になるのはこの本で描き出されたアメリカの厳しい労働環境の中で(有給制度も保障されてないらしいよ。まぁ制度があっても日本みたいに有給消化できないケースもありますが)、子どもを抱えながらも働き続けざるを得ない低所得層。あるいは教育を得る機会に恵まれなかったがゆえに、本人の意志に反して専業主婦になるしかなかった女性たち、です。そういう「『働く/働かない』の選択肢」を持たない女性たちの視点で書かれた本を今度は読みたいな。